2009年6月2日
部活を引退して1年が過ぎた。高校を卒業して2カ月だ。
一年というのは長いようで短く、思い出すといつもちょうどいい時間と思い出を感じる。
長すぎることもなく、短すぎることもない、ぴったり一年だ。
このバランスが崩れてきたっ時、俺はまた一つ年を取るのだろう。
そんな1年前に、俺はO高校男子バスケ部を引退した。
最後の試合、今だから言えることだが、俺はあそこで負けてよかったと思っている。
俺たちは目標を達成してはいけなかった。
都合のいいことばかりしてきて、自分たちでそのことに気が付かずに、自分を偽ったものに自信や誇りを持つことはあの頃の俺が知る限り最悪の犯罪だった。
あの部活には弱さがにじみ出ていた。
部活だけではない。
あの学校の教室や廊下にも、体育館での集会にも、イベントにも、高校時代のあらゆる場面で俺は高校生という生き物のずるさや不完全さを感じてきた。
それは俺が彼らと同じ弱さやずるさや不完全さを持っていたからに他ならないのだが。
俺ははっきり言って、あの試合で勝ちたくなかった。
県大会に行きたくなかった。あれ以上長く部活を続けたくなかった。
ひょっとしたら俺は、先輩たちが引退してしまってから、一度も勝ちたいなんて思ったことがなかったのかもしれない。
早く負ければその分嫌な緊張感のある練習をしなくて済む。だからできるだけ早く負けたかったのかもしれない。
今でもそれはよくわからない。
そんなことすらどうでもよかったのかもしれない。
たとえるなら、バスケ大好きビンス・カーター少年を、卓球部に入れて毎日練習させるのと同じ拷問を俺は味わっていた。
俺にとってはバスケの試合で勝とうが負けようがどうでもよかった。
先輩たちがいた頃は違う。
本気で勝ちたかった。
でもそれは先輩が勝ちたいお思っているから勝たせてあげたいという、先輩への忠誠心から来ていたものかもしれない。
とにかく、俺たちはあそこで、負けるべくして負けた。
俺が言うのも失礼な話だが、うちのチームに県大会に行くほどの価値はなかった。
技術で言えば県に行けるレベルはあった。
だが県大会に行ったところで、そんなもの俺にとって何の価値もない。
何より我慢できなかったのは、特に深く考えるということもせず、そこにシステムがあることすら理解できていないような連中が、バスケットボールという極めて謎の行為を利用して自分を大きく見せようという虚栄心だ。
そんな連中は全員まとめて地獄へ落ちればいい。
2009年6月27日
俺は何を恐れていたのだろう。緊張と睡魔に襲われ、手は震え、目はうつろだった。しかし、すこぶる集中していた。なしなしルール、点5で始まったこの決戦早くも3回戦。一回戦目は何もできなかった。させてくれなかった。テンパイになったと思うと誰かが上がってしまう。一発を2回振り、やきとりの俺はハコって一回戦目が終了した。自分を解き放てば勝てるよ。ケイコさんはそういった。その時は意味が解らなかった。
今ならわかるさ。3回戦目の半荘2曲目。手牌はまずまず。中と九ピンのトイツ、赤五マン、ドラは九ピン、中で鳴けば満貫、俺は親。舞台は整った。今こそ己を解き放つのだ。上チャの九ピンをポン、ドラ確保。なしなしルールでは役牌を先になくか暗刻でなければ役が付かない。中の他にも白、發が一枚づつ。勝負は始まったばかり、必ず来る。ピンズと字牌が半々くらいと五マンのトイツ。赤五マンを生かしてトイトイで行くか、ピンズで染めるか?
發ツモ…
上チャのチュウポン…
染め手しかない。赤五に別れを告げる。ここからが勝負だ。
白ツモ…
胸が高鳴る。低くても小三元は狙える。ドラが絡んで倍満。上チャの4ソウを鳴いてイーシャンテン。大三元は消える。今はそれでいい。もともと大三元とは程遠い手牌だ。どうしても上がりたい。
と思った矢先、下チャのKさんがリーチ。対面ケイコさん追っかけリーチ。だがもうここまで来た。後には引けない。あたり牌が来ないことを祈る。今の俺なら引かない!
發ツモ…テンパイ
必ず降る牌だ。テンパイから一巡目、二ソウツモ切り。二巡目、北ツモ切り。一周るのがとても長く感じられる。誰か振れ。早くツモれ!
三巡目、五ソウ… ばっかもーん!
次で發をツモってホンイツ小三元ドラ9の親倍満で8千オールの2万4千点を先輩たちから奪い取った。こうして俺は輝かしい大学麻雀デビューを飾った。
2009年6月29日
大学生にはスキがある。別に大学生だけじゃないけど、とにかく人には隙がある。
例えば、一見しっかりした服を着ている人でも、靴下がボロボロだったり、下着がダサかったりする。高校生の時は制服で、服装になんて気を使ったことのない人が、とりあえずジャケット着とけば何とかなるっしょと頑張ってみたものの、靴がぼろくその訳わからん奴だったりする。Tシャツのデザインが、なんだかよくわからない英語がたくさん書いてあるやつだったりする人もいる。
たまに、全身隙だらけで、もぉ隙というか君は…という人もいる。そういう人に限って、僕毎月ファッション雑誌買ってますとか、服のこと解ってます見たいな顔をして、おしゃれさんであることを周りに知らせたがる。
者には正しい使い方があって、それを知らない人が意味のないお金を使うのなら俺にくれよと言いたくなる。あらゆるものにはコンセプトが必要だと私は考える。何か目標や目的が必要だ。彼らにもそれをわかる日が来るだろうか。
おわり