2011年 誕生日
毎年恒例ということで、今年も日記を書きたいと思う。もう数分もしたら俺は21歳になる。別にどうってことはない。この日が近づいているのに気がつかないほどに、身の回りの環境が変わってしまったからなのかもしてない。20だったものが21になる、それだけだ。特別な思い入れなんてないし、後悔もなければ抱負もない。ただ今年もこうして生きていられたから、またひとつ歳をとる瞬間を迎えることができた。
一年前の日記を読んだ。一年前はまだあのド田舎で、毎日自堕落な生活を飽きもせず繰り返していた。
…後三分…
一年前の今頃、俺はCと別れて冷たい雨の降る橋の上でひとり激しい川の濁流をぼんやりと眺めていた。今思えば素敵な時間だった。
…あと一分…
そうしてもがきにもがいて、最後まで抵抗して見せた十代を失って、早くも一年が過ぎたわけだ。
お誕生日おめでとう。
東京へ来てから生活は一変した。俺には彼女ができたし、大学の授業も増えた。専門学校にも通いだした。三月には東日本で大きな地震があって、何万人も人が死んだ。Yは先月名古屋に引っ越した。そして俺は彼女と二人、このろくでもない街に残された。
七月に専門学校が始まって、最初のうちは毎日少しでも空き時間を見つけて頑張って勉強していた。八月に入ってからは一変、毎日昼過ぎまで平気で寝ていた。おまけに周りが夏休みで自分だけ勉強に縛りつけられどこにも遊びに行けないことに腹を立てほとんど勉強をしなかった。バイクを塗装して、二三日実家に帰った。九月に入ってからは毎週のようにツーリングに出かけた。彼女を後ろに乗せて、帰りには温泉に行って、映画を見ながらビールを飲んで眠った。十月に入ってからは毎週Yの家へ出かけて行った。小説の構造を練るため、ツーリングに行くため、競馬に行くため、色々忙しかった。Mの彼女ともご飯を食べに行った。そしてYは東京から消えた。あの場所には時々戻って、アコギサークルの連中と昔のようにくだらない時間を過ごしている。Cは引っ越したみたいだ。Hはバーテンダーの夢を早くもあきらめたみたいだ。
近いうちに小説を書こうと思う。近いうちと言っておいて、いつになるかは分からないが。俺にはそういう時間が必要だと思う。