螢・納屋を焼く・その他の短編
発行日 1984年7月5日
発行元 新潮社
1.螢
87年発表『ノルウェイの森』の第二章、第三章の下敷きとなった。
『ノルウェイの森』
彼はその夜ガレージの中で死んだ。N360の排気パイプにゴムホースをつないで車の中にひきこみ、窓の隙間をガム・テープで目貼りしてからエンジンをふかしたのだ。
蛍
ホンダ N360
冬のあいだに僕は新宿の小さなレコード店でアルバイトをした。クリスマスには彼女の好きな「ディア・ハート」の入ったヘンリー・マンシーニのレコードをプレゼントした。
蛍
ヘンリー・マンシーニ「ディア・ハート」
2.納屋を焼く
この短編は「僕」がフォークナーの短編を読んでいる描写がある上、題名がフォークナーの「Barn Burning」(1938年 本作の英訳はこの通りである。またフォークナーの「Barn Burning」の日本語題も「納屋を焼く」)と酷似しているため、村上が本作を書く準拠枠としていることが複数の論者に指摘されている。一方で村上自身は同短編を読んだことが無いと否定し、「僕」がフォークナーの短編を読む箇所を『村上春樹全作品 1979~1989』に収録するにあたって「フォークナーの短編集」を「週刊誌を三冊」に改変している
wiki/納屋を焼く
フォークナー「納屋を焼く」
彼女は古いジャズ・ヴォーカリストが好きだったので、フレッド・アステアとかビング・クロスビーとかのレコードがかかった。まんなかでチャイコフスキーの「弦楽セレナーデ」がかかって、それからまたナット・コールになった。
納屋を焼く
フレッド・アステア
ビング・クロスビー
チャイコフスキー「弦楽セレナーデ」
ナット・コール
レコードが終わり、彼女がまたLPを五枚選んだ。最初の曲はマイルス・デイヴィスの「エアジン」だった。
納屋を焼く
マイルス・デイヴィス「エアジン」
妻のためにグレーのアルパカのセーターを買いいとこのためにウィリー・ネルソンがクリスマス・ソングを唄っているカセット・テープを買い、妹の子供のために絵本を買い、ガール・フレンドのために鹿の形をした鉛筆削りを買い、僕自身のために緑色のスポーツ・シャツを買った。
納屋を焼く
ウィリー・ネルソン
3.踊る小人
おかげでグレン・ミラー・オーケストラのジャケットにローリング・ストーンズのレコードが入っていたり、ラヴェルの「ダフニスとクロエ組曲」のジャケットにミッチ・ミラー合唱団のレコードが入っていたりした。
踊る小人
グレン・ミラー・オーケストラ
ローリング・ストーンズ
ラヴェル「ダフニスとクロエ組曲」
ミッチ・ミラー合唱団
しかし小人はそんなことはちっとも意に介さないといった風だった。小人は今、「ギター音楽名曲集」というジャケットに入っていたチャーリー・パーカーのレコードにあわせて踊っていた。
踊る小人
チャーリー・パーカー
僕はレコードをかけた。フランク・シナトラの古いレコードだった。小人はシナトラの声に合わせて「ナイト・アンド・デイ」を唄いながら踊った。
踊る小人
フランク・シナトラ「ナイト・アンド・デイ」
4.めくらやなぎと眠る女
5.三つのドイツ幻想
まもなくヘンデルの「水上の音楽」の第二組曲が流れだす。朗々としたトランペットがぼんやりと曇ったクロイツベルクの空に輝かしくひびきわたる。
三つのドイツ幻想
ヘンデル「水上の音楽」第二組曲
コメント