回転木馬のデッド・ヒート
発行日 1985年10月9日
発行元 講談社
1.はじめに・回転木馬のデッド・ヒート
カーソン・マッカラーズの小説の中にもの静かな唖の青年が登場する。
はじめに・回転木馬のデッド・ヒート
カーソン・マッカラーズ「心は孤独な狩人」
2.レーダーホーゼン
レーダーホーゼンとは、ドイツ南部で男性に着用される肩ひも付きの革製半ズボンのこと。
僕は彼女を家にあげ、台所でコーヒーを作って出した。そして二人でコーヒーを飲みながら「ジョーズ」の最後の二十分ばかりを観た。
ジョーズ
3.タクシーに乗った男
青い色の中に、黒と紫が流し込まれる。とてもシックな色だ。デューク・エリントン・オーケストラのトーンのように、シックでぶ厚い。
タクシーに乗った男
デューク・エリントン・オーケストラ
4.プールサイド
彼は台所に行ってもう一本ビールを飲んだ。そして居間のステレオ装置の前にうつぶせに寝転び、ヘッドフォンをつけ、夜中の二時までブルックナーのシンフォニーを聴いた。
プールサイド
ブルックナーのシンフォニー
ビリー・ジョエルは今度はヴェトナム戦争についての唄を歌っている。妻はまだアイロンをかけつづけている。
プールサイド
ビリー・ジョエル「グッドナイト・サイゴン」
二人はそれから銀座にでかけて、フランソワ・トリュフォーの新しい映画を見た。二人は結婚前に「野生の少年」を一緒に観たことがあった。新作は「野生の少年」ほど面白くはなかったが、それでも悪くなかった。
プールサイド
フランソワ・トリュフォー「野生の少年」
5.今は亡き王女のための
いわゆる悪循環というやつだ。出口がない。「ちびくろサンボ」に出てくる三匹の虎みたいに。バターになるまでやしの木のまわりを走りつづけることになる。
今は亡き王女のための
「ちびくろサンボ」
6.嘔吐1979
コールマン・ホーキンズだとかライオネル・ハンプトンといった中間派に近いものの後期のレコードを集めている。
回転木馬のデッド・ヒート 嘔吐1979
コールマン・ホーキンズ
ライオネル・ハンプトン
だから彼がピート・ジョリー・トリオのビクター盤を持っていて、僕がヴィック・ディッケンソンの「メインストリーム・ジャズ」を持っていたりすると、その二つは双方の合意のもとにめでたく交換されることになる。
回転木馬のデッド・ヒート 嘔吐1979
ピート・ジョリー・トリオ
ヴィック・ディッケンソン「メインストリーム・ジャズ」
それから彼は部屋に戻り、TVでニュースを見て、それが終わるとエド・マクベインの「87分署」の新作を読みはじめた。
回転木馬のデッド・ヒート 嘔吐1979
エド・マクベイン「87分署」
それから最後の電話がその夜の10時25分で、そのとき僕はエロール・ガーナーの『コンサート・バイ・ザ・シー』を聴きながらもらいもののシーグラムVOを飲んでいました―
回転木馬のデッド・ヒート 嘔吐1979
エロール・ガーナー『コンサート・バイ・ザ・シー』
7.雨やどり
大理石のカウンターの上に野菜がまるごと積んであって、スピーカーからドリス・デイの「イッツ・マジック」が流れていて、デザイナーとかイラストレーターといった種類の人間が集まって感覚革命の話をしているようなタイプの店だ。
回転木馬のデッド・ヒート 雨やどり
ドリス・デイ「イッツ・マジック」
その騒々しいグループが傘をばたばたとすぼめながら店にとびこんできたのは、僕がソウル・ベロウの新しい小説を読んでいる時だった。
回転木馬のデッド・ヒート 雨やどり
ソウル・ベロウ
8.野球場
9.ハンティング・ナイフ
そしてそのあいだ僕はビールを飲みながらカセット・テープ・プレイヤーでローリング・ストーンズだかマーヴィン・ゲイだかを聴き、彼女は「風と共に去りぬ」の文庫本を読みかえしていた。
ハンティング・ナイフ
マーヴィン・ゲイ
「風と共に去りぬ」
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