私の数少ない成功談の一つに、就活の話がある。私は大学院を卒業し、1年ほどぷらぷらした後、会計士試験に落ちて、旅に出た。その後就活を始めるのだが、1か月ほどで20社以上にエントリーシートを送り、書類選考が通った15社すべての面接に合格し、15社の内定を勝ち取った。
そんな私は今年、3年半在籍した会社からの転職を考えている。この機会に、私が就活面接無敗伝説を成し遂げる上で心掛けたことをまとめたいと思う。
【目的】とにかく内定をもらうこと
私は就活に特別苦手意識があった。大学院の1年目の2月ごろ、会計士なんて合格するよりも就活で一般企業に入社して出世するほうが早いのでは?と考え、就活をしたことがあった。名門私立の大学院在学生だった私は、自分のスペックなら高望みさえしなければどこでも内定をくれるだろうと高をくくっていた。しかし現実は甘くなかった。まず書類選考でバンバン落とされた。10社ほどエントリーシートを提出したが、返事があった会社は1社か2社だった。そして書類選考を通過した会社のグループディスカッションでは、学部3回生たち相手に一言も発することができず(何せコミュ障なため)、あえなく撃沈。その他の面接へ赴くも、面接官の質問に的を得た回答ができず、ことごとく落とされた。自信をすっかり喪失した私は、「コミュ障の俺が頑張って就活やって一般企業に入るより、一人で勉強して会計士になったほうが早い」と自己肯定し、早々に就活をリタイアした。もちろんその後会計士試験の勉強に力を入れたわけでもなかった。要するにくそ人間だった。
当然そんなくそ人間が会計士試験に合格できるはずもなく、大学院を卒業から一年後、ようやく重い腰を上げて就活を開始する事とした。
【結果】面接無敗伝説
私は早速大手就活サイトに登録をして、エージェントと面談の予約をした。ほとんどのエージェントから言われたのが「経歴は輝かしいのですが、経験も資格もないとなると、応募できる企業は限られますね」ということだった。当たり前だ。当時の私にあったのは「院卒という学歴」と「やる気」のみだった。
最終的に私は、大学院のころ講師で来ていた会計士が運営する人材紹介サービスを使って、今の会社に転がり込んだ。かつてその講師が学期末に懇親会を開いた際に、勉強のつもりでたまたま参加していた私は、後に私が利用する人材紹介サービス運営会社の経営陣の名刺を大量にゲットしていたのだ。
私は代表の名刺を握りしめ、人材紹介エージェントに挨拶をしに行った。「うちの社長の受講生さんでしたか」といって、資格も経歴もない私に仕事を紹介してくれた。そして内定後は赤坂の高級焼肉店に連れて行ってくれた。
人生は何があるかわからないなと、私はしみじみ感じた。私があの懇親会に参加していなかったら(終わった直後は時間の無駄だったと後悔したが)、名刺をもらってなかったら、私は今頃別の会社で働いていたかもしれない。話がそれた。
とにかく私は、すべての面接で内定を獲得した。
【勝因】選り好みしなかったこと
一度就活で大敗した私が15社の内定を勝ち取った最大の理由は「選り好みしなかったこと」、これに尽きる。私は【成功談】ナンパのノウハウを駆使して就活に挑んだ。具体的には下記の通り。
・選り好みをしない
まず第一に、私は当時就職先を選り好みできる立場になかった。資格も経験もありません、でも入れて下さいなんて言って入れるような会社は、はっきり言ってろくな会社じゃない。だから、「こんな私でも面接をしてくれるというのであれば、喜んで伺います!」というスタンスで就活に挑んだ。それくらい切羽詰まっていた。25年も学生をやっていた人間がいきなり社会に放り出されるのだから、藁をも掴む思いだった。
・来る者拒まず、去る者追わず
だから面接のオファーがあった会社は、基本的にすべて受けようと思っていた。職種に拘りもなかった。建築業だろうと、住宅系だろうと、メディア系だろうと税理士事務所であろうとIT系だろうと、呼ばれた先に行ってひたすら面接をこなした。むしろ様々な業種をのぞき見るのが楽しみだった。そして去るものは追わなかった。書類選考に通らなかった会社はすぐに忘れた。なぜか?
・数打ち当てる
とにかく数を打ったからだ。書類選考に通らなかったことをくよくよ悩む暇などなかった。毎日のようにメールや電話で面接先の人事や就活サイトのエージェントでやりとりをして、スケジュールはすぐに埋まった。
・勝てる相手としか戦わない
同時に心がけたことは、とにかく勝てる勝負をすること。負けが続くとどうしても心が折れそうになる。小さな勝ちを取り続けることで経験を積み、自信を得る。そして来るべき本番に備えるのだ。
だから対戦相手(就活の場合は企業)の順番には気を配った。いきなり本命には行かない、本命を倒せるだけの実力を付けて、初めて勝負ができる。
・身なりや姿勢に気を配る
ナンパの基本でもあるが、これは有効な人間関係の基本でもある。中身がない分、身なりくらいは好印象を与えられるように心がけた。それまでほとんど使ったことがなかったワックスで髪型を整え、延びすぎた眉毛を切り、ヒゲを抜き、笑顔の練習をした。スーツのシワをとり、靴を磨き、センスの良いネクタイをしめ、背筋を伸ばした。
・大きな声ではきはきしゃべる
これも基本的なことではあるが、絶対に外せない。私は当時25歳だった。新卒の学生に比べれば老けて見えたが、面接官からすればまだまだ若造だ。だったらせめて若者らしく、快活に振る舞うことを心がけた。
・体力がありそうにふるまう
上に同じく、若さをアピールした。また私が学生時代にバイト先の喫煙者で、人事担当が面接で好印象な学生について話しているのを盗み聞きした「体育会系で元気な子は、どこでも働かせられるという安心感があり好印象」という情報を参考にした。事実、私が現在働く上場企業でも、体育会系は大変重宝される。体を壊したり、心を病んだりする心配を相手に与えないことは、就活だけでなく就職後の昇進にも大いに役立つ。
・企業研究を怠らない
当たり前だが、何もできないならせめて企業研究くらいしてこいと、私が面接官なら当然思うだろう。その企業はどのようなビジネスで成り立っているのか?何がメインの収入源で、どんなサブビジネスがあるのか?今後どんな方向に向かおうとしているのか?社長の経営理念は?従業員は自分の会社をどう思っているのか?
・口説くつもりで話す
面接官を口説くつもりで話をした。相手が女性ならなおさらだ。自分という人間を如何に魅力的に見せるか、如何に一緒に働きたいと思わせるか、如何に逃したら惜しいと思わせるかを本気で考えた。
・覚えてもらうための工夫
面接官も暇ではない。毎日同じような面接希望者に会って、同じような面接をする。面接で勝ち抜くためには、好印象を与えるだけではなく、別のインパクトも必要だ。私が凝らした工夫は、「自分はどんな人間か?」という質問に対しての回答だ。「するめ」や「潤滑油」なんていうありきたりの回答では印象に残らない。「私は、音楽のジャンルで言うなら、フュージョンメタルのような人間です。ジャズの計算された繊細さと緻密さに、メタルの圧倒的な爆発力と熱量を掛け合わせたような人間です。普通の人には全く興味を持たれませんが、好きな人にはとことん好かれます」
・聞きたいことを用意する
必ず、こちらから聞きたいことを3つは用意しておく。しかも、相手の知的好奇心を刺激するような質問だ。私が最終面接で役員に必ず訪ねたこと、「会社を運営する上で、成功と失敗を分かつポイントはどこにあると思いますか?」会社役員はこの手の質問が好きだ。そして皆嬉しそうに回答してくれた。私自身もこの回答を聞くのがすごく好きだった。経営者によって、全く別の答えが返ってくるからだ。機会があったらまとめよう。
この質問の目的は2つ、相手企業に対する興味を示すことは好印象に繋がる。そして覚えてもらいやすくなる。
・相手が何を望んでいるか
相手は自分に何を求めているか?私が片付けるべき用事は何か?ただ業務全般に人手が足りないのか?特定の分野で活躍できる人間が欲しいのか?だとしたらそれはどんな人間で、どんなスキルや雰囲気をもって、どんな言葉で説明するだろう?相手が望む人間を想像して、その人間になりきって面接に挑もう。
・何でもやりますという熱意
上の「体力があるように~」と同じだ。自分はどこでも働けますよ、それだけの体力とやる気がありますよ、残業もガンガンできますよ、とアピールしたほうがもちろん好印象だ。
・何ができるのかを明確に
「自分は資格も経験もないです。でもやる気だけはあります!取ってくれたら馬車馬のように働きます!!」これが私の決まり文句だった。何もできませんで取ってくれる会社などない。何ができるか、何を頑張れるかを明確に相手に説明すること。
上記を駆使して、私は面接を受けた全15社から内定をもらった。そしてもちろん、14社は断った。その15社のうち、内定を受けようかどうか迷ったのは2社だけだった。つまり15社中13社は、悪く言えば練習相手だ。でもその13社があったから、私は残りの2社にたどり着くことができた。受ける前から、ここには受かっても行かないだろうなという会社も何社かあったが、その13社は経験と自信を積むために確実に必要だった。
入社を懇願されても、入るつもりのない会社の内定は絶対に断ろう。お互いにとって時間の無駄だからだ。企業側に選ぶ権利があるように、企業側がとりあえずでオファーを出すように、我々にも選ぶ権利があり、とりあえず面接を受けることもできる。
優先事項は明確にしよう。
以上