【日記】2010年12月「スウィートソウル」

日記

昼の長さが違うからか、冬の間の半年のほうが早く感じる。しかし、半年は半年だ。

何から書こうか、12月の後半にはサークルのクリスマスライブがあってONEをやった。打ち上げはCがとちってわけのわからない中華料理屋でやることになった。前のバイト先だ。すっかり変わり果てていた。店員にまともな日本語を話せる人間が一人もいなくて、二三度注文したにもかかわらず料理が来ない店だった。まだKさんたちがいたんだ、なつかしい。歩いて行ったせいで少し遅れて到着し、タバコを吸いそうな先輩の席に混ぜてもらった。SSが誕生日会に行けないと言って早めに誕生日プレゼントをくれた。イギリスの高級たばこで、一箱二千円するやつだ。その後のことはよく覚えてない。駅前の居酒屋で二次会をしたのかもしれない。KRが机の下でAちゃんと手をつないでたのもその時だ。

いつかは忘れたがみんなが誕生会を開いてくれた。Cから電話がきて、バイクでCの家へ向かうと部屋が暗くなっていて、俺がローソクを吹き消した。Kは明日券と書かれたわけのわからないノートの切れ端、Yさんはアロマキャンドル、Cはティーセット、KRはお風呂用の小さいプラネタリウム、M3は図書券、北村氏はパンツをくれた。その後は覚えていない。

クリスマスイブにはJのうちに行った。大学が休みに入って、26日が有馬記念、調度いいから25あたりに東京にアパートを捜しに行こうと思っていた。Yはクリスマスイブの一番忙しい時だから、きっとピリピリしてんだろうなと思って避けた。この前泊った新百合ヶ丘のホテルでもいいがお金がない。Mの家は遠い。Jしか頼むやつがいない。

誕生会が終わって一泊して、24日の夕方頃Cの家を出た。来てほしかったら呼んでくれとJにメールしておいてからとりあえず家でごろごろすることにした。Jからメールが返ってきていきさつを話すとまんざらでもなさそうだったので行くことにした。新幹線で品川まで行って、南武線で稲田堤まで向かう。何か買ってった方がいいと思ってコンビニでサントリーのオールドを買っていった。

アパートについたら誰にも見つからないようにこっそり侵入する。インターホンを押して中に入る。ここに来るのは春以来、こいつに会うのは夏以来だ。すごく嬉しそうに笑った顔をよく覚えている。ウイスキーを飲みながらハイライトを吸って、パソコンで明日見に行くアパートの場所を確認した。寒い夜だった。風呂に入って布団にもぐりこむ。できれば後ろから抱き締めたかった。でもこれ以上物事を複雑化させないためにも我慢した。

この夜見た夢をよく覚えている。きれいな草原の上でスネークがばらばらになる夢だ。あれはどういう意味だったんだろう。

次の日の朝、Jは車の教習で早くに出て行った。目が覚めてからしばらくの間、ベッドの中で知らない天井を眺め続けた。冬のか弱い太陽光がカーテンの隙間から洩れ、朝の冷たい空気が部屋を満たしていた。すごく清々しい朝だった。あの瞬間俺の精神は信じられないくらいの安息と平安の中にあった。ベランダに出てタバコを吸った。時刻は11時で、空はきれいに澄み渡っていた。本当に幸せな朝だった。

その後再び息を殺してアパートを抜け出し、登戸へ向かった。地図を頼りに小田急線沿いを西へと歩いた。俺がまだ小学生のころ、長女が上京することになって、家族みんなでこの辺りにアパートを探しにきたことがあった。

初代デリカの後部座席をフラットにして兄弟3人で毛布を掛けて車中泊した。長女は牛の着ぐるみのようなパジャマを着ていて、妙にテンションが高かったのを思い出した。翌朝開店と同時に不動産屋へ家族5人で押し寄せ、紹介された物件を一つ一つ見て回った。俺は途中で飽きて近くの小学校で一人で遊んでいた。最終的に姉が決めたのが、新百合ヶ丘のから徒歩15分ほどの距離にある1Kのアパートだった。だから小学生の俺には、新百合ヶ丘は都会を象徴する街に見えたし、事実新百合ヶ丘は美しく洗練された街だった。東京に越してくるなら、まずは新百合ヶ丘の近くで部屋を探したいというのが私のかねてからの願いだった。

向ケ丘遊園を過ぎ、生田、読売ランド前、百合丘と、事前にリサーチした物件の外観を見て回りながら新百合ヶ丘を目指した。新百合ヶ丘に到着すると、かつて姉が済んだアパートの近くを散歩した。私にとっての東京、私にとっての憧れの街、今も変わらず魅力的であることを確かめた。駅の近くでお昼を取ってから、またいくつか物件を見て、駅から唐木田行の電車に乗った。栗平駅を降りて15分ほど歩いた場所に、本命のアパートがあった。なぜここが本命か?夜に星が見られそうな立地にあるからだ。そしてアパートの隣にはスーパー銭湯とコンビニがある。これ以上のロケーションはほかにないというほど、すべてがそろっている。唯一、通学時間を差し置いてはということだが。

俺は本命のアパートの階段を勝手に登り、3階のベランダからの眺めを確認した。ベランダは細い道を挟んだ川に面しており、その向こうは雑木林になっている。これなら都会の明るい空でも星を見ることができる。問題は…大学が遠い、乗り換えが増える、ということだ。

俺は駅まで歩きながら、どうするべきか悩んでいた。環境を捨てて通学時間を優先するか、通学時間を捨てて環境を優先するか、どちらがよりストレスがないか、どちらがより幸福な学生生活が期待できるか。

思えば幸せな悩みだった。大学受験を終え、S市でアパート探しをしていたころの俺には、そんな幸福感を感じることはできなかった。ただただ東京へ行けなかった悔しさと情けなさが思い出されるだけで、新生活に期待を持つことができず、不安の方が大きかった。

今は違う。俺は東京行の切符を勝ち取って、来年からここで生活するんだ。死にたいくらいに憧れた、花の都大東京。

S市を去らなければならない寂しさはある。サークル仲間と別れなければならない辛さはある。厳しい環境で勝負することへの不安もある。だが、新しい生活への期待と、ついに憧れを手に入れたという達成感と、俺は確実に前進できているという実感があった。帰りの新幹線の中で、車窓を流れる街の明かりを見ながら、そんな複雑な思いに気の向くまま思考を巡らせた。

おわり

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この記事を書いた人

平成生まれのアラウンド・サーティーです。30歳を迎えるにあたって何かを変えなければという焦りからブログをはじめました。このブログを通じてこれまでの経験や学びを整理し、自己理解を深めたいと思っています。お気軽にコメントいただけますと励みになります。どうぞよろしくお願いいたします。

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